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ゴールドケースにシルバー文字盤のクロノマチック カレラ(Ref. 1158)。






 1960年代の手巻きカレラは伝統的な丸型ケースと特有の角型ラグを採用している。文字盤色は黒か白。しかしここからカレラのバリエーションはぐっと広がる。サブダイヤルは同色または対比色のどちらか。タキメーター、デシマルミニッツ、パルスメーターもあった。カレンダーはシンプルなデイトとトリプルカレンダー(曜日、日、月)から選べ、素材はステンレススティール、ゴールド、ゴールドメッキがある。

 ホイヤーはお気に入りのケースメーカーであるピケレ社(Piquerez)に新しいクロノマチック カレラのケースデザインを依頼した。ピケレは、カレラのために全く新しいデザインを起こすのではなく、ジェラルド・ジェンタが1964年にオメガ コンステレーション用に生み出したスタイルを引き継いだケースを作った。ジェンタが生んだ画期的な「Cライン」のケースでは、ラグはケースから延びているというよりリューズから弧を描くようにつながり、ラグからラグにかけてがCの文字の形になっている。Cラインのケースは1960年代後半に人気を集めいくつものブランドで使われるようになった他、手巻きクロノグラフモデルにも採用されはじめた(オメガ キャリバー321やエテルナ バルジュー72など)。カレラの新バージョンのためにピケレは厚みを増したCラインケースも設計したが、節度をもって新しいムーブメントを搭載できる最小サイズ (38.5mm) を維持した。


初期の自動巻きカレラ。YGとSSケース。

 クロノマチックカレラには2つのバージョンがあった。チャコールまたは青の文字盤に白のサブダイヤルを備えたSSモデルと、シルバー文字盤のYGモデルだ。リシャールミル 時計その後すぐにシルバー文字盤にコントラストの強い暗色のサブダイヤルモデルも続いたが、こちらは文字盤にChronomaticではなくAutomatic Chronographと記載されている。新しいカレラの文字盤はどちらかというとクリーンで、タキメーターがベゼル内側の文字盤と風防の間に刻まれていた。

オータヴィア

初代自動巻オータヴィアには文字盤上部にChronomaticの文字がある。

 1962年の発売以来、オータヴィアの決定的な特徴といえば黒い文字盤と白いサブダイヤル、およびさまざまな機能のための刻印(ダイビング、トラベル、タキメーターなど)が入った回転ベゼルだったが、こうした特徴は新しいクロノマチック オータヴィア(Ref. 1163MH)にも引き継がれた。ピケレはCラインケースを新しいカレラのためにデザインし、オータヴィアのために2つ目のバージョンを作ることになる。オータヴィアの特徴である回転式のベゼルを組み込んだ、より大きなケース (42mm)だ。

 オータヴィアは最初の7年間、黒の文字盤に白のサブダイヤルを採用していた。しかしクロノマチック オータヴィアの開発を記念してホイヤーは2つ目の色展開を発表。白い文字盤とそれに対比させた黒いサブダイヤルを配置し、アクセントに青を効かせたモデル(Ref. 1163T)である。この白文字盤モデルはスイスのF1ヒーロー、ジョー・シフェールが使っていた。今でもオータヴィアの白黒青モデルは「シフェール」と呼ばれている。